非破壊検査の中で「探傷」に用いる主要な検査方法の使い分けを解説します。
まず、試験体の「内部のきずを調べるのか」「表面のきずを調べるのか」によって検査方法は下記の通りに分類されます。
試験体の内部を探傷する検査方法
RT(放射線透過試験)
UT(超音波探傷試験)
試験体の表面を探傷する検査方法
MT(磁粉探傷試験)
PT(浸透探傷試験)
内部の探傷方法(RT/UT)の使い分け

試験体の内部のきずを調べる非破壊検査方法は、大きく分けてRT(放射線透過試験)とUT(超音波探傷試験)の2種類ですが、RTは従来のフィルム方式のほかにデジタル方式(DRT)の選択肢があります。
また、UTは従来法に加えて、大検では検査結果を画像で表示できる「フェーズドアレイ超音波探傷試験(PAUT)」も活用しています。
ここでは「RT」「DRT」「UT」「PAUT」の4種類に分け、諸条件に応じた使い分け例をご紹介します。
※DRT、PAUTについては特に有効な場合のみ記載しています。
- RT放射線透過試験
- DRTデジタル放射線透過試験
- UT超音波探傷試験
- PAUTフェーズドアレイ超音波探傷試験
「検査現場の条件」に対する使い分け
| 検査現場の条件 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 試験体の両側にスペースがなく、片側からしか検査できない | UT | RT は放射線装置とフィルムで試験体を挟んで撮影するため、試験体の前面と背面にスペースが必要。 |
| 狭所での検査 | UT PAUT | RT は放射線装置が比較的大きく、狭所には対応しづらい。 PAUT は UT に比べて探査範囲が広いため、特に狭所に適用しやすい。 |
「検査結果に関する条件」に対する使い分け
| 検査結果に関する条件 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 画像での結果報告が必要 | RT DRT PAUT | RT は現像フィルム(デジタル画像が必要な場合は DRT を適用)、PAUT はスキャン画像。 |
| 即時に結果確認が必要 | DRT UT PAUT | DRT 方式であれば即時の結果確認が可能。 |
| きずの深さ位置の情報が必要 | UT PAUT | RT は試験結果が二次元の情報(平面図)となるため、きずの深さなどの情報は得にくい。 |
「試験体の条件」に対する使い分け
| 試験体の条件 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 板厚が厚いもの | UT PAUT | 検査可能な板厚の範囲は材質等にもよるが、基本的に RT より UT の方が探傷できる距離が長い。 |
| 試験体がコンクリート | RT | コンクリートは密度が低く超音波が伝播し難いため、RT の方が有利。 |
| 試験体が鋳造品や粗粒材 | RT | 一部、PAUT でも対応可能。 |
| 試験体の形状が複雑 | RT PAUT | RT は試験体の形状や表面状態の影響を受けにくい。 |
| 表面に塗膜あり | RT |
「きずの種類」に対する使い分け
| きずの種類 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| ブローホールなどの体積がある球状きず | RT | RT では放射線の透過方向に奥行きのあるきずを検出しやすく、開口幅が小さい面状きずは検出しにくい。 |
| 割れや接合不良などの面状きず | UT | UT では探傷面に平行して広がりのあるきずを検出しやすく、球状きずは検出しにくい。 |
RT、DRTについての詳細は下記ページをご覧ください。
UT、PAUTについての詳細は下記ページをご覧ください。
表面の探傷方法(MT/PT)の使い分け

試験体表面のきずを調べる主な非破壊検査方法は下記の2種類です。
- MT磁粉探傷試験
- PT浸透探傷試験
「試験体の材質」に対する使い分け(最重要)
| 試験体の材質 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 試験体の材質が「強磁性体」 | MT PT | 強磁性体には MT を適用する場合が多いが、PT も適用可能。 |
| 試験体の材質が「非磁性体」 | PT | MT は試験体を磁化する必要があるため、非磁性体には適用不可。 |
強磁性体とは:磁石に強く引き寄せられる性質をもち、外から磁界を与えることで磁化する(磁石の性質を帯びる)物質です。代表的な物質としては鉄、ニッケル、コバルトが挙げられます。
◎MTは磁化できる強磁性体に対してのみ適用可能です。
非磁性体とは:磁石に引き寄せられない金属や非金属全般を指します。アルミニウム、銅、チタン、オーステナイト系ステンレス、セラミックス、プラスチックなど、幅広い物質が該当します。
◎PTは強磁性体、非磁性体ともに適用可能です。ただし、浸透液を吸収してしまう多孔質材料・吸湿性材料や、⽯油系溶剤により劣化・変質してしまう材料には適⽤できません。
「検出したいきず」に対する使い分け(重要)
| 検出したいきず | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 表面に開口しているきずのみ | PT MT |
PT はあらゆる方向の開口きずを 1 回で検出可能。 MT は試験体を磁化する方向によって検出できるきずの方向が異なる。 |
| 表面に開口しているきず+表面直下の非開口きず | MT |
MT は表面直下 2〜3mm 程度の開口していない内部きずも検出可能(直流で磁化した場合)。また、薄い塗膜の上からでも検査可能。 |
◎表面直下の開口していないきずも検出できるのはMTのみの特長です。
「検査現場の条件」に対する使い分け
| 検査現場の条件 | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 電源がない | PT |
MT は試験体を磁化する際に電流を用いるため、電源が必要。 PT は電源を必要とせず、一般的な方法(溶剤除去)であれば高所や狭所にも対応しやすい。 |
| 火気厳禁 | MT PT |
MT、PT ともに、可燃性の有機溶剤を含むスプレー剤を使用しない方法で対応可能。 加えて MT は火花のリスクのない「磁束投入法」を選択する。 |
「試験体の形状や大きさ」に対する使い分け
| 試験体の形状や大きさ | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| 形状が複雑な試験体 | PT |
PT は浸透液が行き渡りさえすれば、形状を問わずに検査可能。 MT は形状に応じた磁化方法を複数組み合わせる必要がある。 |
| 長尺、大型の試験体 | MT |
MT は連続した処理を効率よくこなせる。広範囲の探傷も比較的スピーディー。 PT は作業手順が多く、待ち時間も発生するため、広範囲の探傷には時間を要する。 |
「きずの形状や幅など」に対する使い分け
| きずの形状や幅など | 適した検査方法 | 備考 |
|---|---|---|
| ピンホールなどの点状・球状の開口きず | PT | MT での探傷に重要な漏洩磁束が点状・球状のきずからは発生しにくいため、PT が有利。 |
| 開口幅がごく狭いきず | MT | きずの開口幅が極端に狭い場合、PT では浸透液がきずに入り込みにくいため、MT が有利。 |
| 方向が不規則なきず | PT | MT は磁化方向に対して直角な方向のきずしか検出できない。網の目のようにさまざまな方向へランダムに走っているきずに対しては PT が有利。 |
MT、PTについての詳細は下記ページをご覧ください。
以上の解説は⼀般的な基準に則った使い分け例となります。
具体的な案件において最適な検査⽅法をお知りになりたい場合は、⼤検までお気軽
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